日本語の発声・発音
お腹から声を出そう
* 大きな声を出そう
大きな声を出すことが、言葉の勉強の第1歩です。よく「マイクがあるのだから、小さな声でも構わないでしょう」という人がいますが、それは違います。マイクは魔法の機械ではありません。小さな声には張りがなく、ぼそぼそと不明瞭な話し方になってしまいます。マイクを通せば声は大きく聞こえますが、張りのないぼそぼそとした感じはそのままです。マイクは欠点が強調されますからむしろ厳しい声になります。
*呼吸
音楽の授業を思い出してください。「喉を使わずに、お腹から声を出しましょう」と言われたことがあるでしょう。大きな声を出そうと思って喉に力を入れると、すぐに喉が痛くなってしまします。張りのある大きな声を出すためには喉を使わずに、お腹に力を入れて発声します。
まず、腹式呼吸を身につけましょう。腹筋を使う呼吸法です。呼吸は日頃、無意識にしているものですから、自分は体のどこを使って呼吸しているのか、確かめてみましょう。 寝ているときは、誰でもちゃんと腹式呼吸をしています。赤ちゃんの産声も腹式呼吸。人が仰向けで眠っているところを観察してみるとお腹がフーッと膨らんだり、スーッとへこんだりしています。それが腹式呼吸です。腹式呼吸の練習をしましょう。仰向けに寝て、お腹に軽く手を当て、息は鼻から吸って口から吐きます。初めはゆっくり、お腹をふくらませながら息を吸います。慣れてきたら、一気に鼻から吸い込みます。今度は立ってやってみましょう。鏡の前で、足を肩幅に合わせ開いて立ちます。肩の力を抜いてリラックスし、息を吸うときに,肩が上がったり胸が膨らんだりしていないか、鏡でチェックします。
呼吸法をマスターしたら、実際に声を出す練習です。言葉に向いている呼吸法は「腹式呼吸」と呼ばれる呼吸法です。普通の人が普段の生活でしている呼吸法は「胸式呼吸」と呼ばれる呼吸法です。「胸式呼吸」ですと、息の吸い方が浅く、横隔膜の動きをあまり伴わないので、呼吸が不安定になりやすく、声がコントロールしにくいのです。ですので、現在「胸式呼吸」発声の方は、呼吸法を変えることでもっと声が出やすくなります。従ってボイストレーニングの第1歩は「腹式呼吸」をベースに身体を開発していくことで、声が出やすくなります。どちらの呼吸も、息は肺に入ります。腹式だからと言って、お腹に息は入りません。
ここで一度体を横に寝かせてみましょう。仰向けになり、片手をおへその下にあて、何度か呼吸します。息を吸うと自然にお腹が膨らんできます。 横になると誰でも腹式呼吸になるのです。お腹に息が入っている訳ではないのに何故お腹が膨らむのでしょうか? 一体お腹の中では何が行われているのでしょうか?
実は胸式呼吸と腹式呼吸の違いは息の入り方にあります。
胸式呼吸の場合は吸った息が肺の上部に入り、肺の上が膨らみます。それと連動して胸や肩が上がってきます。ラジオ体操時の深呼吸はとてもわかりやすい胸式呼吸です! 思い切り、胸式呼吸をすると、喉の筋肉がカタ~クなります。肩が上がって、喉が筋張っていたら、その人は上半身を緊張させて声を出しています。喉が痛くなったり、枯れたりします。浅い胸式呼吸だと、変なところに力が入ってしまうというデメリットもあります。
練習時のポイントは、呼吸する際に「どう体が反応してくるか」で横隔膜の動きの確認をします。そしてより深い呼吸を身につけていきましょう。その時に胸や肩が上がらなくなり、お腹や背中の内側にある風船が膨らむような感覚を感じられていたら、とてもいい感じです!! この腹式呼吸で出す声のことを「腹声」といいます。
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肺の下には横隔膜があり、その下には胃や肝臓など内臓があります。横隔膜は通常どんぶりをひっくり返したような形になっており、その下にある内臓を覆っている感じで存在しています。肺の下に空気を入れると、肺が膨らんで下に下がり、どんぶりをひっくり返したような形だった横隔膜が段々平らになります。
そうすると、内臓も下に押し下げられます。胴体の下には
骨盤が存在する為、ある一定の位置まで内臓がおりてくるともう下にはいけなくなりますので、おさまりどころを探して内臓が前の方に動いたり、横、後ろ側も動いてお腹や背中が膨らみます。息ではなく内臓の動きがお腹周辺を膨らませるのです。
そして、胸式呼吸と腹式呼吸の最大の違いは横隔膜の動きを伴うということです。この横隔膜の存在は非常に重要で、声の安定の要になる要素で、ここがきちんと
使えていれば、非常に声は出やすくなってきます。
*共鳴
前口発声
「発声のときは大きく口を開けましょう」とはよく言われることです。大きく口を開けたほうが良い声が出ると思っている方が多いのではと思います。しかしいきなり「本当は口を開けない方が良い声がでますよ」と言うと「今まで何をやっていたのか・・・」と悩んでしまう人もいます。 口を大きく開けることが悪いということではありません。もちろん最初のうちは、口を開ける訓練をすることも良いのです。なぜなら、最終的には「口の中が開いている」ことが大事なので、そもそも口があまり開き難い状態であると、良い声にたどり着くことはありません。 だから、口を開ける訓練をしておくことは、肉体的な準備が出来るという意味でも良いことでもあります。
それでは、どのような口の開け方で発声したら良いのでしょうか?
じつは、口を開けない方がよく響くのには理由があります。あまり口の前を開けすぎると、せっかく良い声を出していても、音の響きが拡散してしまうのです。
ある程度口の前は閉じて、口の中を開けている方が、響きが集まってよく響きます。
例えば、クラシックの歌手は、大きなホールでもたいていマイクなしで歌いますが、野外劇場の場合はマイクを使うことがあります。それは音が散ってしまうからです。 よく響くホールは天井が高いですね。口の中も同じと考えてください。いかに口の中を開けるかというほうが大切です。良い声の人は、口の中で音を共鳴させて音を響かせることをしています。
ただ、「口の中を開ける」と言われれても、やみくもに開けていても意味がありません。 口の開け方を説明するとき、ボイストレーニングでよくあるのが「軟口蓋を上げて」(軟口蓋の場所が良く分からないし上げ方も分からない)とか、「ハッ?!と驚くような顔をして」とか、「喉を開けて」(どうやって開くの?)、「目を吊り上げて口を開けて」などがあります。私自身、この指導を受けたとき、これだけでは、意味が分かりにくいと思います。
それでは、どうやって口を開けて発声したら良いのでしょうか?
口の開け方と響きは密接に関連します。
口の開け方次第では響く声も響かなくなりますので、細心の注意が必要です。 ただ、一度響きを見つけてしまえば、声は楽に鳴るようになっていきますので、ぜひ、口の開け方と響きをトレーニングしてみてください。
本日は、口の開け方と同時に、音を響かせるためのトレーニング方法をご紹介しましょう。
まず、鼻濁音を発音するときを試してみてください。 例えば、「ながい」というときの「が」これを鼻濁音にすると「なngがい」となります。 「ng」となるとき、舌の位置に注意してみてください。 舌の奥が喉の上奥のほうにタッチしますね。 触るとちょっと「おえっ」となってしまう場所です。 この場所と舌の位置を覚えておいてください。
それでは、次の手順で、試しに発声してみましょう。
1、あごを下げて、口を開ける。(☆ヒント:口の開け方はほどほどに)
2、大きくゆっくり息をすう
3、「ng」の位置に舌をおく
4、ng~と発声する。このとき、鼻の周辺でビーンとよく響くくらい息を流してくださ い。
☆ヒント:「ビーン」を感じ難い人は小鼻の横を両手の人差し指で軽く押してくださ い(他人にはつまったような「ん~~~」と聞こえます)
5、舌を少しずつ下げていき「ん~があ~~~」と発声します。このとき、舌の動きに合 わせて顎まで下げないように。「ビーン」の感触が少しでも残るように、音をよく聞 きながらちょっとずつ舌を下げてください。
☆ヒント:響きの素を作っていますので、あまり大きな声を出さないようにしてくだ さい。一気に舌を下げてしまうと、どこで響いたか分からなくなってしまいますの で、少しずつ様子をみながら下げてください。
手順1に戻り、10回繰り返してください。
●息の流れを確かめる練習
- 口を開けたまま、口からだけで息を吸ったり、吐いたりする。
- 口を閉じて、鼻からだけで息を吸ったり、吐いたりする。
- 口を開けた状態にして、まず口からだけの呼吸をする。
- 口を開けたままで、鼻の呼吸に切り替える。→このとき、口の奥のほうで何か動く感じを実際に確かめる。
- 口を開けた状態のまま、口と鼻の両方から息を吸ったり吐いたりする。
●声の流れと共鳴の練習
- 口を開けた状態のまま無声子音HA(ハアー)を出しながら口呼吸をする。
- 「ハアー」の音を「ハ」と「ア」に分解し、最初の部分は無声子音H(ハ)で出し、途中から「アー」と有声母音にする。
- 鼻をつまむ・・音色が変われば、鼻にも息が流れている良い証拠。
- 手のひらで口を覆う・・口からだけの声だった場合、息も声も止まるのでこの状態は駄目(*声の高さは低めの方が良く分かる。)
- 口を開けて、鼻からだけの呼吸をしながら、「ンアー(N・A―)」と出してみる。
手のひらで口を押さえて、鼻からだけの呼吸であれば、押さえても離しても音色は変わらない。声を出しながら、そっと口を少しずつ開けていく。口はやや縦長に開くと良い。
●「鼻と口の両方に共鳴させる。」
鼻をつまめば口の方が、口を押さえれば鼻の方の声が残り、いずれの場合も音色と音量が変わる。*この声が最も効率の良い共鳴。練習には「マア(MA)」の音が良い。
最初は鼻だけの声から練習し、その声が口にもかかっていくように工夫する。
●共鳴感覚のつかみ方
- 適当な出しやすい高さの声を出しながら、顔を上に向けてみる。
→口からだけの声になる。 - 少しずつ顔を下に向けていく。
→次第に鼻の声に変わっていく。 - このように首から上を前後にまわしながら鼻と口の両方にかかった声をさがし、その感覚を聴覚的にも、内部の振動感覚としても覚え込む。
- 首を動かさないで息の流れを変えることによってできる工夫をとる。
- (ひびきの感覚をつかむ)
- ・低い音からだんだんに上にあがって出していく声より、最初から高い音を出して、そのひびきを変えないように気をつけながら低い音に下がっていく出し方の方がつかみやすい。
- ・できるだけ鼻声にした方が早くつかめる。最初からできるだけ鼻声にしてから次第にその比率を少なくして口腔共鳴もまぜていく。
*姿勢と呼吸が正しくできると、共鳴のことは特別考えたり練習しなくても、声を出すと発声器官も共鳴器官も正しく自然に運動するはず。
実は、いい声を出すためには、発声や発音といった「声の出し方」以上に大切なことがあるのです。
それは、「姿勢」と「呼吸」です。
*姿勢
どんな声が「いい声」だと思いますか? ひとつの目安として、その人の気持ちよさが相手にも伝わる、よく響く声です。
ではいったいどうすれば出せるのでしょうか。 声をよくするのに、姿勢と呼吸が大きく関係しています。
まずは、大事な「姿勢」からです。
背筋がピンと伸びたいい姿勢の人というのは、声を聞く前から、しっかりしていて信頼できそうな人だろうな、という好印象を与えます。話をする前から、すがすがしい気持ちにさせてくれます。つまり、ただ立っているだけでも、信頼性が増すメリットがあります。しかも、声をよく響かせるうえでも、いい姿勢を保つことが絶対条件です。
「姿勢をよくしなさい!」というのは、きっと子どものころから親御さんや学校の先生に言われてきました。
でも、特に難しいのは、いい姿勢を「保つ」ことです。
一瞬であれば、いくらでもいい姿勢になれます。でも、そのまま長い時間を過ごすと疲れてきます。ふと気を抜いて、背筋が曲がってしまっている……ということがあります。
それは、「姿勢をよくしよう」として、腰をそらせすぎたり力を入れすぎたり、無理な体勢をとっている場合が多いからです。
いい姿勢を保つには、その逆をいってください。
長い時間いい姿勢でいるためには、「姿勢よく!」と思うのをやめるのです。
代わりに、次の3つのポイントをいつも意識してみてください。
・足の親指を平行に並べ、地面にしっかりつける
・目線は高く保つ
・頭の頂点「百会」に糸があって、あやつり糸のように引っ張られている状態を作る。
・体を縦半分に分ける「正中(せいちゅう)線」を意識する
簡単ですよね。無理をして背筋を伸ばそうとするのでなく、この4つをやれば、自然と背中がピンとするのです。
この4つのポイントについても、それぞれコツがあるのでお話ししていきましょう。
足は腰幅に平行に並べて立ちます。肩幅でなく、腰幅です。
両足の親指は不自然なほど力を入れる必要はないのですが、地面からの力を受けられるように、しっかり地面に着けてください。柔道をはじめ格闘技では、親指が浮いた瞬間にストーンと崩されることがあります。それと同じように、いい姿勢を保つためにも、足の親指を地面から離さないことは鉄則です。無理に力を入れる必要はありません。親指がつま先まで地面についていることを意識してください。
親指がしっかり地面に着いたら、いったん軽く膝を曲げて、ゆっくり踏み込みながら立ちます。ゆっくり、ゆっくりです。「スカイツリー」のように、まっすぐ伸びていく。
このとき、ただ膝を伸ばそうとするのではなく、地面を押すことで自然と体全体が上がってくるよう意識してください。そうすると、膝を伸ばしたときに、お腹がきゅっとなって、下半身が安定し上半身が前傾しづらくなります。
ここまでできたら、多くの人はかなりいい姿勢になっています。
ただ、ちょっとだけ頭が前側に倒れたまま残りやすいことがあります。
だから、自分の頭の真上にフックがあると思って、そのフックに軽ーく頭が吊られている感じで持ち上げてあげてください。これを「スカイフック」といったりもします。天からのフックで頭が吊られている。自分で持ち上げると思うと力みますが、天のフックに持ち上げられて自然と頭が持ち上げられる感じです。
そうしたら水平線を見るような気持ちで遠くを見やる。あごを上げる、あるいは目線を上げると思う必要はありません。軽く頭を高くしてあげる。
最後に、いったん遠くを見てください。そして近くに視線を戻すと、自然にいい姿勢になります。
注意点として、この姿勢をとるときガニ股になると、肋骨と骨盤が開き気味になります。すると男性も女性も所作がきれいに見えませんから、ガニ股は厳禁です。
逆に、自分で骨盤を締めようなどと思うと、変なところに力が入ります。
ですから、両足の親指と親指を平行に並べて地面につけ、頭を少し上げてあげると、それだけできれいな姿勢になります。
そして最後に、先ほどお伝えした体の縦半分を通る「正中線」を意識してみましょう。空から地面まで体の真ん中をズドーンと串刺しにされる感じです。
自分のエネルギーが空高くから、地面の深くまでドーンと通じているようなイメージをもってみてください。座っているときも同じで、正中線を意識します。
よく柔道などの稽古で「正中を正しなさい」といわれます。正中が曲がっていると、不自然に見えたり清潔感がなくなったり、相手ときちんと向き合っていない、というメッセージを送ってしまうことになりかねないからです。このことは、普段の生活でもいえることだと思います。
いい姿勢を保つコツは、「正しい姿勢」をとろうとしないこと。
正しくと思いすぎると力んだ姿勢になり、見栄えもあまりよくありません。力めば、もちろん声にもよくありません。
「正しい姿勢」や「いい姿勢」ではなく、「自分が気持ちのいい姿勢」をとるぞ!と思ってください。それが自分にも相手にも気持ちのいい、美しい姿勢へとつながります。